男性衣裳
デザイン
イブニングベスト
イブニングベスト(evening vest)とは、男性の夜の正礼装であるテイルコート(燕尾服)用の白いベストのこと。シングルとダブルの型があり、いずれも襟付きが原則で、胸元のVゾーンのカットが深いのが特徴。素材はマーセライズ加工と呼ばれる防縮と光沢加工を施した、マーセライズドコットン(mercerized cotton)生地を用いたダイヤ形のピケ素材が主に使われる。燕尾服を着る際は、三つ揃の燕尾服+立襟イカ胸両穴シャツ+白蝶タイ+スタッド釦&カフス釦は白蝶貝+ポケットチーフは白のスリーピーク挿し+靴は黒エナメルのパンプスが絶対条件。
スペンサージャケット
スペンサージャケット(spencer jacket)とは、ウエスト丈またはボレロ型のショート丈の上着や外套のこと。本来はダブルブレストで6ボタン3つ掛けのテールコート(燕尾服)を、ウエストラインから下のテール部分を切り落としたものが原型で、袖なしも見られた。この短い丈をスペンサー丈と呼ぶこともある。体型にフィットしたシルエットが特徴。ショート丈の効果で足が長くスタイル良く見える。
スペンサージャケットは1790年頃に登場し、19世紀初めにかけて、男女ともに流行した。イギリスのジョージ・ジョン・スペンサー伯爵(1758〜1834)が好んで着用したことが名前の由来。その後、スペンサージャケットは、イヴ・サンローランによって1960年代中頃に再度紹介され、80年代になってリバイバルする。他にも、学校・職場などの制服に広く用いられている。
拝絹
拝絹(はいけん)とは、タキシードやテイルコート(燕尾服)の襟で、朱子織の光沢のある布地を張ったもの。本来はシルクだが、光沢感があるサテンやタフタが用いられることもある。英語では一般的にフェーシングカラーというが、フェースドラペル、シルクフェースドカラー、シルクフェーシングということもある。夜の正礼装のタキシードとテイルコートのみに用いられる。拝絹の由来は、電気のない時代に、ほのかな明かりでも光を反射して、顔を見えることができるように付けられたとの説がある。
ショールカラー
ショールカラー(shawl collar)とは、へちま状に外縁がやや丸みがあり細長く折り返っている曲線的な一枚襟のこと。ガウンの襟のように、肩掛けを羽織ったようなデザイン。別名、へちま襟、へちまカラーとも呼ばれる。タキシードに多く使われる襟型で、襟の下が丸くなっているものをショールカラーと呼び、襟の先がとがっているものをピークラペルと呼ぶ。タキシードが誕生した当時はショールカラーのデザインだった。
フェーシングカラー
フェーシングカラー(facing collar)とは、タキシードやテイルコート(燕尾服)の襟で、朱子織の光沢のある布地を張ったもの。本来はシルクだが、光沢感があるサテンやタフタが用いられることもある。フェースドラペル、シルクフェースドカラー、シルクフェーシングなどともいう。日本語では拝絹(はいけん)襟という。夜の正礼装のタキシードとテイルコートのみに用いられる。拝見の由来は、電気のない時代に、ほのかな明かりでも光を反射して、顔を見えることができるように付けられたとの説がある。
ちなみに、襟のアウトラインに絹のテープや飾り紐で縁取りを施したものは、バイビングカラーと呼ばる。
ピークドラペル
ピークド(peaked)は、先のとがった、尖頂のあるという意味。ラペル(lapel)は、ジャケットの下襟(したえり)、襟の折り返し、折り襟の意味。 ピークドラペル(peaked lapel)は、ゴージ(gorge:上襟と下襟の接点にある切り込み)が逆三角で、下襟の先端が上に向かっているもの、先の尖っているもの。ダブルスーツは基本的にピークドラペル、またドレッシーなスーツのにもピークドラペルが多用されている。日本語では「剣襟」と呼ばれる。また、礼服にダブルスーツが多いことから、礼服のことを「剣もの」と呼ぶこともある。通常襟穴(ラペルに付くかがり穴)は左側に一つあるのが普通だが、ピークドラペルの場合、襟穴が左右のピークに付くことが多い。ピークドラペルのスーツは体を細身に見せてくれる効果がある。
ブートニエール
ブートニエール(boutonniere)とは、男性フォーマルの上着の襟(ラベル)に付いている襟穴、またはその穴に挿す花のこと。フラワーホールともよぶ。一般的なジャケットの衿にも穴の開いていない襟穴が形骸的に付けられていることが多い。ブートニエールは元々はフランス語で「ボタン穴」の意味だが、英語でも「ボタンホールに差す飾り花」を意味する。
ブートニエールは、16世紀頃、第一ボタンホールに花を挿すファッションが流行し、その花をブートニエールと呼んだことが由来とされる。ここからブートニアやコサージュが派生した。
通常、ブートニエールにはカーネーションやバラが用いられる。これはテールコート(燕尾服)は別名、ホワイトタイと呼ばれるように、白い蝶ネクタイを着用するため、それに合わせて白のカーネーションをコーディネートしたのが由来とされる。結婚式の新郎衣装でのブートニエールは、新婦のブーケに使われる花材と合わせてブートニアを挿すのが一般的。
カラーレット
カラーレット(collarette)とは、モーニングコート用のベストのVゾーンの内側に取り付ける白い飾り襟のこと。通常取り外しができるようになっている。慶事の場合のみに着用するものであったが、現在ではほとんど使われることはない。カラースリップともいう。
スタッズ
スタッズ(studs)とは、着脱できるシャツ襟やカフス用の留めボタンのこと。または、タキシードなどの礼装用のプリーツシャツの胸につける飾りボタンのことを指す。スタッドボタンとも呼ばれる。本来、スタッズとは金属の鋲のことで、俗に言うカシメ・ハトメ・リベット・スネールヘッド・鋲(丸・星・角・円すい・ピラミッド)などの総称。
ストライプドトラウザーズ
ストライプドトラウザーズ(striped trousers)とは、モーニングコートやディレクタースーツなど、男性用の昼の礼装服に合わせる、黒とグレイの縦縞柄が入ったズボンのこと。祝儀用には縞の間隔が広い明るい色調のものが、弔事など不祝儀には反対に縞の間隔が狭く暗めの色調のものが用いられる。裾は折り返しのないシングル(カフレス)で、裾口は前上がりのモーニングカットで処理される。日が暮れてから用いられる事はない。
コールズボン
モーニングコートやディレクタースーツなど、男性用の昼の礼装服に合わせる、黒とグレイの縦縞柄が入ったズボンのこと。ストライプドトラウザーズ(striped trousers)の日本の呼び名。
カフレス
カフレス(cuffless)とは、ズボンの裾の仕上げ方法で、折り返しのないシングルカットの総称。ズボンの裾のことをイギリスではターンアップ(turnup)、アメリカではカフ(cuff)と言い、裾なしという意味でカフレス(cuffless)となる。俗に「ストレートカット」「シングルカット」と呼ぶことが多い。
フォーマルのパンツの裾は、基本的にカフレス、つまり折り返しなしのストレートな裾である。折り返しのあるものはカジュアルで日常着に施される。本来はカフレスはフォーマルなスタイルとされていたが、現在ではカジュアルなものにも多く使われている。
モーニングカット
モーニングカット(morning cut)とは、ズボンの裾のカットのひとつで、シルエットを美しく見せるために、甲からかかとにかけて後ろ斜め下にカットしたもの。前後の高低差は一般的に1.5〜2cm程度。足が長く見える効果がある。主に礼装用のズボンに用いられるカット法だが、70年代に流行したベルボトムのジーンズにもよく見られた。
モーニングカットの語源は、モーニングコートのズボンがこの型となっていることが由来。正式にはアングルドボトム(angled bottom:角度をつけた裾の意)という。
側章
側章(がわしょう)とは、フォーマルのパンツの両脇にある飾りのブレードのこと。日本ではタキシードには1本、テイルコート(燕尾服)には2本あるのが正式とされるが、これは日本だけの慣習で、実は燕尾服の場合には、2本ついたものを選ぶのは任意で良いとされる。英語では、サイドストライプ(side stripe)という。
ズボンに側章が付けられたのは、18世紀末から19世紀にかけての頃、ナポレオンの軍の軍服のズボンに採用されのが起源とされる。ズボンの形が、キュロット(半ズボン)からパンタロン(長ズボン)に変って間もなく、兵種毎の色分けに用いられた。
プレーントゥ
プレーントゥ(plane toe)とは、プレーンは「平らな」、トゥは「つま先」を意味し、男性用正装靴で、つま先部分のトップからサイドにかけて継ぎ目がなく、つま先飾りもない靴のこと。タキシードを着用する際には黒エナメルでプレーントゥのオペラパンプスを合わせるのが正式な着こなしとされる。
ストレートチップ
つま先の部分が横一文字に切り替えられたデザインの紐靴。靴の先端にキャップ(帽子)のように革を被せたエッジが一直線に見えるためストレートチップと呼ばれる。正式な昼の礼装用の靴として用いられる。切り替え部にはメダリオン(穴飾り)をあしらったものと、ないものがあるが、穴飾り等が付いていないものほど冠婚葬祭に適している。英国調のクラシックで、ウィングチップよりさらにドレッシーなシューズ。黒の内羽根式ストレートチップは、最もフォーマルな短靴のひとつといえる。「内羽根」とは甲の部分の羽根が内側に付いていること。
Uチップ
Uチップ (U-tip)とは、紐靴のデザインの一つ。U字形の革片(チップ)を甲の切り替え部分に使ったもの、またはU字型の縫い目を付け装飾的に用いているもの。同様に甲の切り替えにV字形の革片を使ったものをVチップと呼ぶ。
Uチップは、イギリス式では別名ノーウィージャン・オックスフォード、アメリカではオーバーレイ・プラッグ・シューズとも呼ばれている。日本ではモカシンの甲がU字型の切り替えデザインであることから、モカシンのことをUチップと呼ぶこともあるが、本来モカシンは主に紐なしのスリッポン(slip-on)で、Uチップは外羽根式で紐の短靴である。 この外羽根式のUチップをブラッチャーモカと呼ぶこともある。
Uチップは1936年に登場し、元々はゴルフ用の靴であった。一部分の革の色が違うコンビネーションモデルの靴をゴルフ・オックスフォードと呼ぶこともある。