結納
儀式・しきたり
結納式
結納を取り交わす儀式のこと。二人が結婚の意志を公言し、両家の関係を紡ぐ大切な儀式である。結納式は二人が婚約者として公私共に認められる「婚約式」といえる。挙式の3〜6ヶ月前の日柄の良い日の選び、できれば午前中に執り行われる。最近は結納式を行わず、両家顔合わせの食事会などで簡略化するカップルも増えている。
【結納式の形式】 1が正式で、下に行くにつれ略式になる。
- 1.双方の家から一人ずつ使者を立て両家を往復し、それぞれに結納品を届ける。
もしくは使者の代わりに一組の仲人が両家の家を往復する。 - 2.女性側の家に仲人と男性側が出向いて結納を取り交わす。
婿入りの場合は逆に女性側が男性側へ出向く。 - 3.双方が一ヵ所に集まって、そこで取り交わしを行う。
- 場所はホテルや結婚式場、レストランの個室など。
- 披露宴の試食も兼ねた結納式プランなどを設けている会場も多い。
仲人を立てない場合は、仲人の代わりに男性側の父親が進行役を務める。結納式には決まり文句の「口上(こうじょう)」があり、式次第の流れの中で結納品を取り交わして行く。結納の席では口上を述べる以外は、挨拶、雑談、世間話などはしない。
口上
口上(こうじょう)とは、申し立て奉るという意味。結婚での口上といえば、結納の席で仲人や両家の代表が、手順に沿って述べる決まり文句を指す。「幾久しくお受けいたします。」などの独特の言い回しがある。地方によってしきたりが異なる場合があるので、式場や結納品業者に事前に確認しておくとよい。
決め酒
結婚の話がまとまると、結納の前の吉日(大安か友引の午前中)に結納を決める仮約束をする。仲人または男性の親が酒と寿留女(するめ)を持参して女性の家を訪ね、正式に結婚の承諾を得る。この風習は前祝い的な盃事で、全国的に行われており、決め酒と呼ばれる。地方によって呼び方は異なり、「樽入れ」「たもと酒」「徳利」などと呼ぶ場合もある。するめの代わりに鯛一尾(地方により雌雄一対の場合も)を持参する地方もある。決め酒をすると「あの家に酒が入った」と言われ、結納が近いことを意味する。現在では決め酒は結納に同時に行うことも多い。また、関西地方では決め酒の習慣はなく“見合扇子”や“扇子交換”と呼ばれる扇子交換をする。
おさえ末広
おさえ末広とは、結納式の前に仲人が両家の間に入って、末広といった純白の扇子を交換する扇子納めという関西地方の慣習。これは、お見合いなどで双方に結婚の意志がある場合や、恋愛中で結納までに期間がある場合などに、扇子を取り交わして事前に結婚の意志を明らかにするもので、「見合い扇子」とも呼ばれる。
一台飾り
一台飾りとは、結納品を各々ひとつの台に載せて飾る形式のこと。結納品ごとに一品一品別の台を用意して飾るためこう呼ばれる。それぞれに台が用意されるので非常に豪勢。儀式の際は、結納品を床の間に飾り付けし、目録のみを渡す。主に関西方面での婚礼に利用される形式。
荷入れ・荷送り・荷出し
女性側が家財道具などを新居へ運び入れること。飾り付けをしたトラックに婚礼の荷物を載せて挙式2〜3週間前の吉日の午前中に行う。単なる「引越し」と言うよりは一生に一度の「儀式」的な意味合いがある。関西地方では「荷入れ・荷出し」、東海では「荷送り」といい、地方によっては「荷物送り」「荷物納め」などともいう。
当日は家財道具の他に、結納返しの品、結納金のお返しの袴料、家内喜多留(酒料)、松魚料(肴料)をお返しする。女性側は嫁入り道具の品目が記された「荷目録」を納め、男性側は「荷受書」を渡す。荷目録の品目数は割り切れない奇数に合せる。目録や受書を渡す時には白木の台に広蓋(ひろぶた)、袱紗(ふくさ)と呼ばれる両家ごとの紋入風呂敷を使って受け渡しをする。家族にお土産を贈る習慣もある。
お茶見せ・お茶開き
お茶見せとは、九州地方にて執り行われる、婚約の報告と感謝の意を言葉の代わりに結納品で語る結納披露のこと。福岡ではそれを「お茶見せ」「お茶飲み」「お茶開き」と呼び、結納の2・3日後から1週間前後の日取りで近所や親戚の女性を招き、頂いた結納飾りをお披露目し、仕出料理などでもてなす。熊本では、結納のあとで近所に結納品のお茶を配る「配り茶」という慣習がある。佐賀の農村部では「お茶講」と称する宴を、長崎では案内状を配って披露宴並みの宴会を開くところもある。
引出結納
引出結納(ひきでゆいのう)とは、東海地方三河地区や九州地方で行われる結納返しのこと。
通常、結納金の返礼金は、袴料として頂いた結納金の金額の一割を、酒肴料は頂いた酒肴料と半額もしくは同額をお返しする。もしくは結納金のお返しに、新郎に背広や時計などの結婚記念品を贈る場合もある。
新郎側から頂いた結納品は、紅白の包みを松葉色の包みに改めて引出結納を納める。これを「色替え」という。水引・箱・白木台・風呂敷などは再利用する。目録や熨斗・末広などの結納返しの品は新たに用意する。
東海地区では、通常は「荷送り」と呼ばれる道具納めの日に行う。荷送りは女性側が家財道具などを新居へ運び入れることで、飾り付けをしたトラックに婚礼の荷物を載せて挙式2〜3週間前の吉日の午前中に行う。その際、新郎本人への土産として結婚記念品を、御家族への土産として身の回りのものを、御先祖へのお土産として線香などを持参する。最近は結納と同時に、引出結納を済ましてしまうケースも増えている。
九州では元々結納返しの習慣は無かったが、最近は引出結納を行う場合が増えている。引出結納は、結納当日に行う場合が多く、現金を返すよりも結婚記念品を贈るケースが多い。