結納
その他
結納品
結納の際に両家で取り交わされる物品のこと。婚約の証として、嫁取りの代価として、また相手側への挨拶と両家の発展を願って縁起物を贈る。結納品は頂いた後、結婚式まで床の間に飾っておく習慣があることから、結納品のことを結納飾りとも呼ぶ。
結納品の内容や個数、各々の呼称は地域によって異なり、一般的に正式には九品目や七品目など、略式は五品目や三品目などと、数が多いほど正式とされ、いづれも奇数で両家同じ数を揃える。各々の結納品にはのしを掛け、鶴亀松竹梅などの縁起物を象った水引飾りを付け、足の付いた白木の献上台に載せて贈られる。関東式では一つの白木台にまとめて並べて、関西式では結納品ごとに白木台を用意する。
代表的な結納品は、長熨斗・目録・金包(御袴料・帯地料)・末広・友白髪・松魚節・寿留女・子生婦・家内喜多留などがある。
結納品を贈る側は、結納品の内容を記載した目録を添えて渡す。結納品を受け取る側は受領した証として受書を用意し、納める側に渡す。また、結納品と同時に婚約指輪や時計などの婚約記念品、家族書および親族書を交換する習慣もある。
結納品は本来、婚姻関係を結ぶ席で共に飲食するための酒肴を贈ったものだったが、次第に花嫁の着物や家財道具、金銭などが加わっていった。現在の結納品は結納金に添える縁起物の飾りの意味合いが強い。
結納飾り
結納の際に取り交わされるもの。結納品に各々のしを掛け、鶴亀松竹梅などの縁起物を象った水引飾りを付け、足の付いた白木の献上台に載せて贈られる。結納飾りは結納品と同義で用いられることが多い。
結納品は結納の後、結婚式まで床の間に飾っておく。床の間が無い場合は、家の中の奥まった場所に低い台を置いて飾ったり、棚の上などに置く。洋室の場合はサイドボードやテーブルの上に飾っても良い。
かつて結納が終わると結納品を床の間に飾り、親族や知人などに披露し、婚約成立を公示したたことから「結納飾り」や「結納開き」と呼ぶようになった。
9品目
結納品のこと。一般的な結納品は9品目が正式と言われる(九州では11品目や15品目)。略式の場合は7品目、5品目、3品目。いずれも割り切れないようにという意味で奇数品目である。正式な品目の数は地域によって異なるので確認が必要。
代表的な9品目とは、目録(もくろく)・長熨斗(ながのし)・御帯料(おんおびりょう)・末広(すえひろ)・友白髪(ともしらが)・子生婦(こんぶ)・寿留女(するめ)・勝男武士(かつおぶし)・家内喜多留(やなぎたる)。略式結納など7品目の場合、9品目から勝男節、家内喜多留を除いたセットになる。
末広
末広(すえひろ)とは婚礼用の扇子のこと。先に向かって次第に広がっていく形状から、将来へ末広がりに幸福と繁栄が与えられるようにとの願いを込めて「末広」と名づけられた。寿恵広、寿栄広とも書く。
1.結納の時に用いられる末広は、白い扇子を2本で一対としたもの。純潔・潔白などの穢れの無い無垢なことを意味している。
2.打掛を着たとき手に持つ扇子。白骨と黒塗りの両面に金銀をあしらった扇面に房付きの細い紐を骨の根元に通したものが、花嫁用として一般的に用いられている。白無垢のときは房飾りも真っ白なものを合わせる。
長熨斗
長熨斗(ながのし)は、結納で用いられる品のひとつ。納幣熨斗ともいう。昔は「のしあわび」という鮑(あわび)の身を叩いて薄く伸ばした物を用いていたが、現在では海草を煮溶かしたものや、ビニール製の代用品を使うことが多い。
鮑は長生きをする貝とされており、不老長寿の象徴とされるため、延命に通じる品として健康や長寿を願う意味を込めて結納品として贈られる。また、熨斗鮑は海産物のなかでも最も貴重な食物であったため、祝事や慶事の儀式に高価な贈答品として重宝されるようになる。
友白髪
友白髪(ともしらが)とは、結納に用いられる品の一つ。友志良賀、共白髪とも書く。共に白髪になるまでいつまでも仲むつまじく添い遂げられるようにと、長寿と夫婦円満の願いをこめた縁起物。白髪に見立てて麻ひもを一対にしたものが用いられる。西日本では高砂人形を加えて贈ることもある。
子生婦
子生婦(こんぶ)とは、結納品のひとつ。昆布のこと。昆布は「よろこぶ」の語呂合わせから、古来から祝い事に欠かせない縁起物。また、昆布は成長が早く繁殖力が強いことから、子宝に恵まれ子孫繁栄を意味する。「立派な子供を産み、よい母になるように」という願いを込めて「子生婦」という字が当てられている。嫁入りの場合は「子生婦」、婿養子の場合は「子生夫」「幸運夫」と書く場合もある。
寿留女
寿留女(するめ)とは、結納の時に用いられる品の一つ。するめいかの干物で、幸せな家庭を作る女性をあらわしている。寿留女は、寿を留る女として縁起を担ぎ、寿は長寿と幸福を、留には一生嫁ぎ先に留まることを、女には良い妻であるようにとの3つの意味がある。するめは長期間保存できることから、結婚生活が末永く続くようにとの願いが込められている。また、かめばかむほど味の出る仲の良い夫婦になるようにとの願いも込められる。
略式結納の五品目には含まれず、略式七品目、正式九品目、またそれ以上の品目数の際に用いられる。寿畄芽と書く地方もある。
勝男武士
勝男武士(かつおぶし)とは、結納の際に贈られる結納品のひとつで鰹節のこと。9品目に含まれるが、略式結納の7品目には含まれない。鰹節の切り口が松の樹の年輪に似ていることから、松の緑の気高さを讃える意味で松魚節と呼ばれる。雄節(背節)と雌節(腹節)を一組にして贈る。雄節と雌節を合わせて夫婦一対を意味したり、合わせた形が亀の甲に似ていることなどから、鰹節は特に縁起の良いものとされ慶事によく用いられる。鰹節はたくましい男性の象徴とされ、勝男節や勝男武士とも書かれ、元気な子供を産み育てるようにとの祈願の意味も込められる。また、栄養価が高く保存食であることから、不時に備えての食料として贈られていた。鰹節の雅語として他に、勝男節、松魚節、嘉津男婦志と書く地方もある。
家内喜多留
家内喜多留(やなぎだる)とは、結納品の一つで、酒肴料の関東式の呼称。家内喜多留は柳樽の雅語の当て字。関西式などではそのまま柳樽と書くところもある。胴・柄ともに朱塗りの柳樽に入れた酒のこと。結納九品目の一つだが、七品目以下には含まれない。
実物のお酒ではなく金子で代用する場合も増えてきている。その際は、「家内喜多留」と表書きし、中包みに金額を書いた金封に金子を入れる。結納金の1割程度を包むのが一般的だが、酒2升分程度の額を包むこともある。
お酒は「一升」と「一生」を掛けて縁起物として婚礼の席に良く用いられ、両家が杯を酌み交わす意味を込めて贈られる。「家内喜多留」は家の内に喜びが多く留まりますようにとの願いを込めた当て字である。
結納金
結納品の一つで、一般的に新郎側から新婦側へ贈られる金銭のこと。「御帯料(おんおびりょう)」「小袖料(こそでりょう)」「帯地料(おびじりょう)」などと呼ばれる。婿入りの場合は逆に新婦側から新郎側へ贈られ、「御袴料(おんはかまりょう)」と呼ばれる。嫁入りに比べ婿入りの方が額が高めになる場合が多い。
本来は、嫁とりの代償・感謝の意味を込めて、反物や帯地などに酒や肴、縁起物を添えて贈っていた。現在では品物の代わりに金銭を贈るようになり、結婚支度金の意味合いが強くなっている。金額は新郎からの場合、月収の2〜3ヶ月分程度と言われ、50万、100万などの区切りのいい額が包まれる。経済的な問題や、地方によってしきたりもあるので、両家で話し合い無理のないように決めるとよい。
新婦側は頂いた結納金のお返しに、「御袴料」として結納返しを行う。金額は地方によって異なり、関西式など全国的には結納金の一割を包むのが一般的。関東式では結納金の半額を包み返すため、半返しとも呼ぶ。また、結納返しの一部を婚約記念品に充てることもある。
翁人形
翁人形(おきなにんぎょう)とは、結納の時に用いられる品。老夫婦の人形で高砂の伝説にちなんでおり、高砂人形とも呼ばれる。翁とは男の老人を敬っていう語。翁人形は縁結びの神として、結納をはじめ古くからお祝いの際には、欠かせない人形の一つ。金婚式や長寿のお祝いにも喜ばれている。
高砂とは、兵庫県高砂市にある高砂の浦で老松の精が、相生『相(あい)ともに生まれ、生きて老いるまで』の老夫婦になって現れたという故事にならった能楽曲で、国と民の繁栄を主題とし、その一部は婚礼などの祝儀で謡われる。
また高砂とは、人生でいかなる困難があっても、人は元の姿に必ず戻っていく(つまり、めでたいところに納まる)という意味もある。高砂の松というのは、芽が出てから様々な風雪に遭って幹が曲がっても、頭の部分は根元と同じ場にある姿のことを言う。
熨斗
熨斗(のし)とは、祝儀の贈り物の右上に添えられている、いくつかの紙片を折り合わせた飾り物。簡易化された、熨斗の形が印刷された「判のし」や、「のし」をひらがなでひと筆書きにしたものもある。また、祝儀袋や贈答品に付ける紙を熨斗袋や熨斗紙という。熨斗は結婚式や結納、快気祝い、出産祝い、中元・歳暮などの祝事に用いられる。
熨斗鮑(のしあわび)は、栄養価が高く長期保存できることから武家の出陣の祝儀に用いられ、戦場の貴重な保存食でもあった。江戸時代には、海産物のなかでも最も貴重な食物であり、鮑は長生きするとされており、不老長寿の象徴として、祝事や慶事の儀式に高価な贈答品として重宝されるようになる。
熨斗の語源は、伸し鮑の製法が、鮑を叩いて平たく伸ばし、天日干しにして作られることからくる「伸した鮑」が「熨斗鮑」に転じ、省略されて「熨斗」となったという説と、熨斗鮑の包み方を「熨斗折り」と称したものが「熨斗」に省略され、包んだ和紙の形を「のし」と称して贈答品に添える風習が根付いたという説がある。
熨斗には紅白などの色紙に黄色の細長い紙が挟まれているが、これは元来伸した鮑(あわび)であったものが擬似簡略化されたもの。本来は、白い和紙の上に赤い和紙を重ね合わせ、中に束ねた伸し鮑を包んで水引で止め結んだもの。
長熨斗(ながのし)は、結納で用いられる品のひとつ。納幣熨斗とも呼ぶ。昔は「のしあわび」という鮑の身を叩いて薄く伸ばした物を用いていたが、現在では海草を煮溶かしたものや、ビニール製の代用品を使うことが多い。
鮑は長生きをする貝とされており、不老長寿の象徴とされるため、延命に通じる品として健康や長寿を願う意味を込めて結納品として贈られる。また、熨斗鮑は海産物のなかでも最も貴重な食物であったため、祝事や慶事の儀式に高価な贈答品として重宝されるようになる。
御知家
九州地方の結納では結納品の中にお茶(御知家)を加えている特徴がある。この慣習のため、九州では結納のことを「お茶」といい、結納が納められると「お茶が入った」と言う。なぜお茶を結納品に入れるかと言うと
1. お茶の木は種から育てるもので、一度は移植することが可能だが、二度目はほとんど根付かない。「貞女は二夫にまみえず」という教えになぞらえて離縁しないように。
2. お茶に含まれるタンニンはタンパク質と結び易い性質があるため、動物性タンパク質の絹などの染めを早める働きをもつ事から、相手の家風に早く染まるように、という意味が込められている。
3. お茶の木は、やせた土地であっても、日当たりが悪くても、根を張り育つ丈夫な木です。 この事から、困難に負けず力強く暮らすことが出来るように、という願いが込められている。
ところがおもしろいことに、中身のお茶はあまり上等なものは使わない。いいお茶はよく出るというが、結婚に「出る」という言葉はタブーだからです。